母娘問題

  • 一卵性母娘(母娘=おやこ、と読みます)
  • 自己愛が強い母親に養育された娘が 成人になって非常に精神的に苦しむ場合があります。母親はいつも周囲からどのくらい大切にされているかを敏感に感じ取るために、娘はその母親の機嫌取りに毎日、追われて疲労困憊していきます。ところが、娘は母親の機嫌取りをしている自覚がないのがほとんどで、なぜか体の不調が続きます。ところが娘は体調を強く心配する母親に感謝の気持ちと迷惑をかけてしまっている罪悪感でいっぱいになって病院を訪れます。ひたすら母親の機嫌取りをする娘と体調を心配する母親、周囲から見たらとても仲が良さそうですが、精神状態はよくありません。ところが母親も娘もお互いの関係性に問題があるとは全く気づかず、病的な共依存状態を作ります。私は長年、この一卵性母娘問題の研究をしてきましたが、いずれかが、その関係性の問題点に気づく必要があります。
  • なぜ、母娘問題は難しい?
  • これは一見とても仲がよい母娘で、まわりからもとても羨ましいとみられているのですが、決して娘の体調はよくありません。娘は母親をとても信頼し、いろんな病院へ連れて行きます。母親は娘の体調を気遣い、懸命に看病します。娘は母親にとても感謝し、自分の体調を心配して、一緒に涙を流してくれる母親に深い愛情を感じ、一生懸命努力をしていきます。 母親に迷惑をかけてはいけないとの思いを背負って頑張り続けていきます。そんな慎ましい母娘は襲いかかる諸問題(受験戦争、バレエなどお稽古事、摂食障害、うつ病、父親との不仲など・・・)を一丸となって乗り越えようとします。なんとも美しい光景ではないでしょうか!  しかし、この関係性のどこが問題なのでしょうか? わからないからこそ母娘関係は難しいのです。
  • 娘の問題について                             
  • 母に母になぜ、親に期待に応えるべく、小さい頃から進学塾に通い、たくさんのお稽古をこなし頑張ってきました。でも、そんな小さな体では すでに限界がきて体は持たなくなってしまった。けど頑張り続けた。自分はどうしてがんばり続けないと行けなかったのでしょうか。挫折が嫌いな自分と喜んでくれるお母さんに・・・・ なにか気付きませんか。答えはここにあります。
  • 母親の問題について 
  • お母さんは、小さい頃どんなお子さんだったでしょうか。がんばり屋さんでしょうか? それとも厳格に養育されてきましたか? でも、おそらく母親(祖母)にすごく感謝していませんか。 いま大人になって、祖母はずいぶん年を取っていますそろそろ介護が必要な年齢かもしれません。 そんなおばあちゃんと一緒の部屋にどのくらいいれますか? 気疲れしてくるなら、そこに答えがあります。
  • 摂食障害と母娘問題                          
  • 表面上はとても仲がいい母娘ですが、娘に深刻な摂食障害を起こしてくる場合が、よくあります。娘の体調を気遣う母親とやせた自己像ををひたすら願う娘との間に少しずつ亀裂がはいって行きます。娘は体重をひたすら減らすことにこだわり続け、そこにひたすら自己肯定感を求めていきます。母からすればいい娘であった面影はなく、ひたすら作ったものを拒絶し、やせていきます。本人は無言のまま抵抗し決して妥協しません。そして、いつの日か母に黙って過食するようになります。娘はなぜ 母親に反抗できないのでしょうか。どうしてやせていくのでしょうか、やせて死んでもいいと願うのでしょうか、母親の養育の問題を見直すとき、はじめてその悪循環から抜け出していくのです。根底にはやせて死んで、見届けてほしいとの思いがある場合があります。
  • 娘の母に対する罪悪感                                 
  • 娘はいつも、思っています。母を苦しめたくない、迷惑をかけてはいけない、泣かせてはいけない。罪悪感で一杯です。そしてそれが、娘自身を苦しめていくのです。もっと、”私が頑張って、頑張って母親を楽にさせてあげたい” でも母親は毎日、悲しんでいる姿をみると 私は母のためになんでもがんばらないと思ってしまうのです。小さな体が母親の親代わりをしてしまう自分がそのにいます。一方では 母親は友人関係、交際関係、学校の進路にいつも気にしているのでお伺いを立てないといけません。でないと機嫌を損ねたり冷たくされます。娘はいつも、ダメで自信がない自分とどのくらい母に愛されているのか知りたくてたまりません。
  • 関係性の改善について              
  • 母親は自分の生い立ちを振り返り、娘は自分の苦しみを母親に打ち明けたとき、母親がその苦しみを理解したときに 初めて関係性の改善が得られます。それまでは何度ももぶつかり、お互い頑固で譲らず、あるときは泣いて抱き合うなどが繰り返されていきます。お互いの苦しみを理解し、共感したときにわだかまりは消えていきます。しかし、お互い感情的な欲求を優先して、なじりあいが続き、共依存の状態が続けば一度別居するか距離を置いたほうがいい場合があります。それがわかっていながらも、離れていくことができないのは なぜでしょう? それは自分の気持ちをわかってほしいとの願いが叶えられないからこそ お互いにしがみつくのです
  • 最後に・・・
  • 母娘がお互いに成人し、娘が30歳を越えても親密な関係性が消えず、もし自分の娘が亡くなったと考えたとき、あるいは自分の母親が亡くなったとき、 もうそのことを考えるだけで涙があふれ、どうかなりそうな気分であれば、お互いに心の傷は大きいのかもしれません。