ADHD ( 注意欠陥多動性障害 )

  • ADHD ( 注意欠陥多動性障害 ) 
  • 注意欠如多動性障害(ADHD)は、多動性・衝動性と注意力の障害を特徴とする行動の障害です
    発症の原因は、先天性の脳機能障害(発達障害)です。ADHDを含む発達障害は多因子性疾患といわれています。多因子性疾患とは、遺伝が原因だけでなく、養育環境、親の喫煙や受動喫煙、飲酒、空気汚染、化学物質、出生時のトラブルや低出生体重児などの因子が複雑に絡み合って発症する疾患のことです。親がADHDだから必ず子どもに遺伝するわけではありません。短期記憶や注意力、推論、判断、感情の抑制などをつかさどる脳の前頭前野の部分の機能障害(ドーパミン系)を起こしていると考えられていますが はっきりした原因は、まだわかっていません。また、養育状況が悪いとADHDの症状もひどくなります。主症状として以下の3つがあげられます。
  • (注意障害)
    勉強などで不注意な間違いをすることや課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。興味のあることには集中しすぎてしまい切り替えが難しい。(ゲームに依存しやすい)話を聞いていないようにみえる
    課題や活動を順序だてて行うことが難しい。同じことを繰り返すのが苦手(飽きっぽい)で、つい必要なものをなくしてしまう、忘れっぽい。注意が長続きせず、気が散りやすい。片付けが苦手
  •  (多動)
    落ち着いて座っていることが難しく、体をくねくねするなど落ち着きがありません。遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しく、人の話を聞かずに、一方的に過度におしゃべりをするなどがあります。
  • (衝動性)
    質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう
    順番を待つのが難しい、平気で状況を考えずに割り込んでしまう。他の人がしていることをさえぎったり、邪魔したりしてしまう。(ワザとやっているわけではなく、自然にやってしまう。)
  • 診断について
    1, 不注意(活動に集中できない、気が散りやすい、物をなくしやすい、順序だてて活動に取り組めないなど)と多動-衝動性(ジッとしていられない、静かに遊べない、待つことが苦手で、他人の邪魔をしてしまう等)が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に、強く認められること
    2.症状のいくつかが7歳以前より認められること
    3.2つ以上の状況において(家庭、学校など)障害となっていること
    4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
    5.広汎性発達障害や統合失調症など他の発達障害・精神障害による不注意・多動-衝動性ではないこと

  • ADHDに合併する問題点
    行為障害
    このようにADHDの子供は、道徳概念を理解しにくく、何回も同じ失敗を繰り返すので、学校の先生や両親に怒られやすく、自分に自信を失っていきます。また、失敗に対して、その時には十分に反省をしているのですが、なぜ、怒られたかなど理由が理解できないためか、また忘れてしまうため同じ失敗を繰り返すのです。この小児はやがてストレスをため、親や先生に隠れて、ドンドン悪い事をおこしていく傾向が見受けられます。同時にわがままで他人への思いやりがなく、罪悪感にさいなまされることなく 、いじめたり、他人の持ち物に損害を与えたり、嘘をついたり、盗んだりします。やがては直接、先生に暴力や暴言などの行動に出ることもあります。これが反抗挑戦性障害と言われる行為ですが、これがそして子供の成長と供に問題行動がエスカレートし、万引きなどの触法行為、人や動物に対する過度の攻撃性や暴力、重大な規則違反などがみられると、もはや反抗挑戦性障害ではなく、「非行」とほぼ同義で扱われる行為障害となってしまいます。また、ADHD→反抗挑戦性障害→行為障害の経過をたどるといった「DBD(破壊的行動障害)マーチ」がみられることもあります。さらに、ごく一部はその後、「反社会性人格障害(ASPD)」へと発展し、犯罪行為を繰り返す人物となっていきます。精神科領域では司法領域とは明確に区別され、犯罪行為に関しての矯正や指導ができません。
  • 治療について
  • (薬物療法)
    子どものAD/HDの薬物治療では、塩酸メチルフェニデート徐放錠やアトモキセチンなどの薬物が主に使用されています。塩酸メチルフェニデート徐放錠は、神経伝達物質のドパミンやノルアドレナリンの活性化が、諸症状の改善につながると考えられています。アトモキセチンはノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害する薬剤です。副作用としては、頭痛や吐き気、体重減少などがあり、投薬を行うかどうかは病態水準によって異なります
  • (養育方法)
    ADHDのお子さんは、道徳概念を理解しにくく、何回も同じ失敗を繰り返すので、学校の先生や両親に怒られやすく、自分に自信を失っていきます。また、状況説明も苦手でうまく説明ができなかったりします。
    ここは代表的なペアレントトレーニングを説明します。ペアレントトレーニングとは、発達障害児を持つ親のための子供の育て方のトレーニングです。これは障害をもつ子供に対して適切な親の接し方を学んでいく方法で、 親の適切な接し方は、障害による症状の改善や、子供が感じている困難の軽減につながります。発達障害児の子育てには、健常児の子育てに比べて知識やコツが必要となるのです。また、発達障害を持つ子供の親は、深刻な悩みや不安を抱える場合が多いですが、ペアレントトレーニングは悩みや不安の解消にもつながります。
    子供の成長のためにもなりますが、親が子育てを辛いと感じなくなったり、子育てに少しでも余裕が出てきたり、親にとってのメリットもとても大きいと思われます。ペアレントトレーニングは、ストレスや深刻な悩みを抱える家族を支援する方法の一つとして、アメリカ・UCLA神経精神医学研究所のハンス・ミラー博士によって1974年に開始されました。日本でもこの方法を改良した肥前方式、奈良方式、精研方式などといった日本版が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。ペアレントトレーニングは親が子どもの行動変容における心理やパターンを理解・分析し、問題行動を適切な対応で減少することのできる技術を獲得することを目的としています。最近ではペアレントトレーニングを受ける母親が増え、対応できる医療機関もほとんどなく、現状では専門家が足りない状況です。養育の原則は単純で、
    1.望ましくない行動は無視
    2.できない行動には手助け
    3.できるようになった行動はほめる
    4.千里の道も一歩から
    5.罰はできるだけ使わない
    しかし、実際は親もADHD傾向があったり、夫婦の不仲や母親が不安障害、父親が理解を示さないなどの問題もあり、家庭状況は複雑であることが多く、家族を1ユニットして見ていくことが大事と思います。