大人の発達障害

  • 大人の発達障害について  
  • 発達障害の診断は、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害など、診断名ごとにそれぞれ国際的な診断基準があり、その人口に対する発生率は変わりません。外来に多くの患者さんが自分が発達障害ではないかと来院されますが、他の病気と違うところは発達障害は生まれつきの病気であるので、幼少期の生育歴が非常に重要になってきます。発達障害であれば、必ず幼少期から必ず何らかの症状がみられます。学校や検診でなどで指摘を受けたり、療育センターや児童相談所で指摘され、通級教室などの指導が必要となったケースは発達障害の可能性が高いと思われます。しかし、幼少期にそのような指摘を受けたことが全くない場合は、発達障害の診断は慎重にならなければなりません。ここで重要なのは子どもの頃の成長の記録や証言(3歳~12歳までの時期)があれば一番いいのですが、その確実な情報を持つのは養育者である両親であることが多く、次に兄弟姉妹です。本人の記憶は確実なものでなく、本人の客観的な評価が重量です。12歳以下で、自分のことを周囲からどのような印象であったか、的確に説明できる人はほとんどいません。受診される方の年齢が40歳をすぎてくると、その両親も高齢になってきて、ますます幼少期の症状が分かりにくくなります。特に受診される本人が幼少期のエピソードを覚えていなくて、その両親がすでに亡くなっていたり、離別、疎遠、断絶状態でまったく情報が得られない状況となると、ますます診断が困難となります。大人の発達障害について精神科医が患者さん以外に、その両親との面談や検査を行いながら、時間をかけて総合的に判断しまが、多くは1~2年間通院後にわかってくるケースが多いと思います。初診時は残念ながら、わかるケースは非常に少ないです。
  • インターネットの情報から、自分が発達障害と思い込むのはよくない
  • 忘れ物が多い、落ち着きがない、人の話が聞けないなどの問題は、発達障害だけで起こるとは限りません。忘れ物はうつ病や認知症の初期でも起こることがありますし、人の話が聞けないなどの問題は 発達だけでなく、統合失調症などの精神病の初期症状でも起こります。このようなことを考えるとインターネットでの簡易診断で、発達障害のテストで該当したので自分は発達障害と思い込むのは良くないと思います。
  • 大人の精神疾患はいろんな要素が含まれている
  • 当院を受診する患者さんの中に、意欲がない。思い通りに頭が働かない。集中力がない。対人関係がうまくいかない。忘れっぽい。周りばかり気にしてしまう。など多彩な訴えがありますが、その多くは発達以外に療育環境により生じた愛着の問題があったり、人格の問題があったり、うつ病や精神病圏の症状が含まれていたり、病態は複雑です。うつ病や統合失調症をはじめとした精神病圏は薬を必要とすることが多く、逆に発達や人格の問題であれば薬はほとんど効果が期待できません。大人の精神的は病状はいろんな要素が含まれており、判断は容易ではありません。人の話やインターネットの情報だけで自分を発達障害があると判断し、発達障害は生まれつきだから、もう治らないと判断するのもよくありません。
  • 発達障害には診断基準を満たさないグレーゾーン(境界レベル)が存在する。
  • 発達障害には軽症から重度まであり、重度はほぼ公的機関(学校、養育センター、健診など、)で判明しますが、特にほとんど病的レベルでない軽度の発達障害は発見するのが困難で、発達障害の検査でも陽性に出ることはありません。しかし親や学校などでは個性的な子供とか変わった子と見られがちです。これを発達障害のグレーゾーンと言われています。このグレーゾーンの発達障害が大人になってから、存在するかどうかの判断は非常に難しくなります。
  • 大人の発達障害と診断することの重要性について、
  • 発達障害に人格の問題やうつ病や統合失調症など、いろんな病態が混ざっている方に、発達の診断や人格の診断をはっきりさせる必要が重要かといえば、私はほとんど重要ではないとの意見を持ちます。確かにうつ病や統合失調の病気はそれぞれ薬が違うので診断は重要ですが、大人の発達の問題を探ることあまりメリットはないと考えます。内科の病気と違って、原因を掘り下げたところで治療には影響しませんし、良くなるためにはあまり必要ではないと思います。大人の精神疾患はあまりにも多くの原因があるので、原因を追究することで疲労や病状の悪化もあります。通常、本人を総合的に判断していきます。いま流行りの認知行動療法では発達の問題や人格の診断などに焦点を当てていません。すべて総合的に判断し、何に困っていて、何が苦しいのか具体的に明確にして、その解決方法を医療従事者と本人と共同作業でやっていきます。そこに発達障害かどうかを明らかにすることは有益ではありません。